未公開株に投資をして上場をした際にその株に投資が集まることにより株価が上がり、
株式を売却することで大きなキャピタルゲインを得る、
非常に夢がある話ですよね。
2018年はどのようなIPO銘柄があったのでしょうか。
2018年に最も話題になったのはAI技術を強みにし運営をしている「HEROZ」ですので、
同社について少し、分析をしてみたいと思います。
👉初値で大きく利益が出た2018年新規上場・IPO株式銘柄を一覧列挙、400万円超の当選株も?時流に乗ったビジネスモデルを一括分析
HEROZを初値で売って得られた利益はどれくらい?
まずは、一番気になるHEROZを初値で売ったらどれくらい儲かったのか?
という点ですが、公募価格で単元株を持っていれば、
なんと一瞬にして445万円の利益が出たことになります。
当たり本数 | 1980本 |
公募価格 | 4,500円 |
初値 | 49,000円(公募価格の10.9倍) |
初値上昇率 | 988.9% |
初値売り時(利益) | +445万円 |
とんでもないですよね。
これは野村証券によると、公開価格に比べた初値の上昇率としては1995年以降のIPOで最大規模とのことです。
どうしてここまでの価値がついたのか、
HEROZの会社なりを調べてみたいと思います。
HEROZとはどのような会社か?
HEROZの簡単な会社概要は以下の通りです。
販売先はGoogle、Appleと超大手企業を相手にしていますね。
4382 HEROZ ひーろーず [ 情報・通信業 ] |
【URL】https://heroz.co.jp/ |
【決算】4月 |
【設立】2009.4 |
【上場】2018.4 |
【特色】AI技術強みに市場予測などBtoBサービスを提供、『将棋ウォーズ』等頭脳ゲームアプリも |
【単独事業】AI関連100 <18・4> |
【伸 長】将棋アプリなど個人向けAIサービスは撤退アプリ減少分あり横ばい。ただ法人向けは金融や建設、エンタメ業界等へ幅広く拡大。サーバー償却費や人件費増こなし営業益伸長。株式公開関連費ない。 |
【標準化】個別の業界や企業向けソフト開発に加え、業界に特化しないソフトの高精度化へ開発推進。日本ディープラーニング協会へ7月参画、深層学習の普及を目指す。 |
【業種】 SI・ソフトウエア開発 時価総額順位 27/179社 |
【仕入先】― |
【販売先】Apple,Google,ポケモン |
【比較会社】3993 PKSHA |
【本社】108-0014東京都港区芝5-31-17PMO田町 TEL03-6435-2495 |
【従業員】<18.4> 39名(33.3歳)[年]420万円 |
【証券】[上]東京(マ)[幹](主)日興(副)マネックス,みずほ,大和,三菱Uモル,SBI,いちよし,岩井コスモ,エース,岡三,極東[名]三井住友信[監]トーマツ |
【銀行】みずほ |
【成長力】 ―% ―% 利益率30.6% ―% 【四半期進捗率】 3期平均―% 今期―%(―%) |
<引用:SBI証券>
HEROZを一躍有名にしたのは、スマートフォン向けゲームアプリの「将棋ウォーズ」です。
これはかなりテレビでも取り上げられましたよね。
将棋ゲームで培ったAI技術を建設業、金融業にも生かしているとのことで、
AI事業の将来性を多くの投資家がポジテイブに捉え、
投資が集まった結果となりました。
HEROZのビジネスモデル
上記四季報の内容にも、
「AI技術強みに市場予測などBtoBサービスを提供、『将棋ウォーズ』等頭脳ゲームアプリも」
とある通り、とにかくAI技術を強みにして、
大企業を相手に事業提携、AI技術によるデータ解析、情報提供により、
利益をあげるビジネスモデルで台頭している会社と言えますね。
HEROZのコア技術は以下であるとされています。
私達は、「将棋ウォーズ」、「CHESS HEROZ」、「BackgammonAce」の開発を通じて蓄積した機械学習等のAI関連の手法を固有のコア技術とし、現役将棋プロ棋士に勝利した将棋AIの開発者などトップエンジニアをはじめとするAIエンジニアが日々開発に取り組んでおります。また、一般社団法人 日本ディープラーニング協会の正会員、及び一般社団法人「人工知能学会」の賛助会員、AIについて最先端の動向を把握するなど、AIを戦略的な重点分野と位置づけております。
当社のAIは頭脳ゲームだけではなく、大手金融機関等でも導入されるなど、様々な業界で活用されています。<引用:当社のコア技術>
代表取締役は以下の2名で構成されており、
双方ともにNEC出身なのですね。
取締役にはペンシルベニア大学MBA、ゴールドマンサックス出身の浅原氏が名を連ねています。
将棋ウォーズの2018年7月30日時点のダウンロード数は470万人、
課金をすることでAIが相手をしてくれ、利用者の将棋の実力を向上させてくれます。
IPO時におけるHEROZの売り上げの多くはこの将棋ウォーズの課金モデルでした。
HEROZの創業者である林氏も、将棋でアマチュア全国優勝数回、
将棋段位6段(当時アマチュア最高段位)を取得しているなど、
まさに自身の強みである「将棋」「AI技術」を組み合わせて市場に殴り込みをかけ、
多くの投資家を集めたことになりますね。
林氏をはじめ、HEROZ成長の源は「実戦に裏付けられたAIエンジニアが多いこと」としております。
HEROZの最大の強みであり、成長力の源は“実戦”に裏付けられたAIエンジニアが多いこと。
将棋の名人を破った「Ponanza」を開発したリードエンジニアや世界コンピュータ将棋選手権で優勝したAI「Apery」を開発したリードエンジニア、NEC研究所出身で電気通信大学と共同で麻雀AIに関する基礎理論を発表したエンジニア、同じくNEC研究所出身で学生時代は「スーパーコンピュータコンテンスト」の常連だった開発部長が在籍しているほか、
大手IT企業の研究所出身者や博士を含む多数のAIエンジニアがHEROZに所属。約40名のメンバー(2018年4月時点)のうち4分の3がエンジニアで、7割はAIやアルゴリズムの開発に携わっており、6割前後が大学院に進学している。
将棋ウォーズも含め、そこで培った深層学習を含む機械学習、
他産業、事業分野に応用可能なビッグデータを用いたサービスで、
大手金融機関などを取引先とし、今後も期待高まる会社と言えます。
IPO時に初値が公募価格の10.9倍となったのも、
もちろんAI技術への期待もありますが、将棋ウォーズのような手堅く、且つ大きく利益を生む課金モデル、
大手金融、建設業、アップル、グーグルなどを相手に取引をしている経営者の手腕、
などなど、総合的に期待ができる企業として、評価されたものと思います。
HEROZの提供サービス
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プロダクト作成段階では、いくら技術があっても課題を明確にしなければプロダクト開発はうまくいきませんが、
HEROZはこの点も長けていると言えるのでしょう。
取締役にゴールドマンサックス出身の方がいるのも、
資金調達はもちろんですが、優秀な人材が集まりやすくなる仕組みを構築できているように思います。
ビジネスとは、データを集めて、成果を測定し、改善していく、
というプロセスの繰り返しですので、その点では機械学習でスムーズにPDCAサイクルを実行できるというのは、
世に大きな革命をもたらすと私自身も感じています。
HEROZの財務状況
ざっくりと規模感と動向を見ていきたいと思います。
以下はHEROZの売上高と営業利益の推移です。
売上規模は通期で10億円前後、営業利益は17/4にようやく黒字となり、
18/4期には17/4期の4倍程度に大きくなっています。
投下していた開発費、広告費、人件費などの回収がようやく完了し、利益が出る体制になりました。
ここで利益を出すことに注力せず、投資を次々と実行し会社を大きくすることに集中して欲しいところですよね。
キャッシュフローを見ていきましょう。
やはり、利益が大きくなってきた18/4期より投資キャッシュフローを大きくしています。
HEROZは自己資本比率も高く、現在は会社を拡大路線に乗せ、
安全経営で長期に渡り、AI技術で革命を起こしていく企業として期待したいところです。
将棋ウォーズはB to C 領域ですが、
HEROZが注力している大手企業を相手にビジネスをしているのはB to B領域ですので、
動くお金も大きく、今後の動向が楽しみです。
AIビジネスの国内市場規模については、2016年 は2,704億円となっておりましたが、2021年には11,030億円に達するとの調査結果もあります(出所:富士キメラ 総研「2018 人工知能ビジネス総調査」2018年1月)。
<引用:HEROZ有価証券報告書>
まとめ
HEROZが上場初値でここまで公募価格が上回った理由としては、
「時流に乗っている」(AI)
「堅実な経営体制」
「将棋ウォーズによる話題性」
が揃っていることが最大の要因ですが、
証券会社がどのように応募者を集めていたのかもきになるところですよね。
IPO株をはじめ、未公開株は割安で放置されている会社が本当に多くあります。
大きくキャピタルゲインを得たいのであれば、
検討に入れるべき投資の一つと言えるでしょう。
以上、